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”Any mind short&short #6" vol.2

2007-03-13
 前回の続きです。今回でこの話は終わりです。少し長いですが、もし暇があればお付き合いください。
 ちなみに前回の話は⇒http://bengine.blog89.fc2.com/blog-entry-34.html


【京子 2】

 京子の日記より

5月13日
 学校から電話が掛かってきた。どうやら父親に宛てた手紙を書く授業があるらしくどう対応すればいいか相談された。学校で和也はそういう事が原因でいじめられたりしてないか心配だ。

9月2日
 和也の部屋を掃除していたら、引き出しの中から私が仕事に行く時に書き置きするメモが大量に出てきた。しかも大事そうに全て折りたたんであった。思わず涙が出てしまった。

【和也 2】

 和也が初めて異性を本気で意識し始めたのは中学生の頃だった。『好き』という気持ちよりも何というか恋に恋するといった感じで日々、意中の女子の事ばかりを和也は考えていた。当時和也が想いを相手に伝える方法として考えたのが、誰かにその子を呼び出して来てもらって直接想いを伝えるか、手紙に募る想いを書き綴り、下駄箱か引き出しにこっそりしのばせる方法だった。和也はその時、手紙で伝える方法を選んだ。理由は、ただ単純に直接会って告白する勇気がなかったのだ。しかし和也は会って告白するよりも勇気がいるような文面の手紙を書いていた。
 この頃和也は、世間一般的にいう思春期というものに突入していたらしく京子ともまともに話す機会がなくなっていた。機会がなくなったというよりかは和也の方が一方的に京子を避けていたのかもしれない。この時代にメールというシステムがあったなら和也と京子も、もっとコミュニケーションがとれていたのかもしれない。いやおそらく思春期というのはそういった事ではなく誰もが一度は経験する意味不明の自己制御が効かない時期なのだ。

【京子 3】

 京子の日記より

7月8日
 和也の机の上に書きかけの手紙があった。読んでみるとこっちが恥ずかしくなるようなラブレターだった。あの子も、もうそんな年頃なのか・・・そういえばあの子は最近、私と中々話そうとしてくれない。それも年頃のせいだといいけど。それよりもあの子が好きな女の子がどんな子なのか気になる・・・

【和也 3】

 和也が高校生になる頃、京子が見知らぬ男を家に連れてくる事が頻繁にあった。その男はやたら和也に対して馴れ馴れしく極端な話、父親面をしてくるのであった。和也はそれがかなり腹立たしかったらしく、その男が家に来た時はなるべく友達の家に行ったりした。京子はその男についての話を和也にはしてこなかった、和也が露骨に嫌な顔をするからだ。この頃の和也は、それどころではなかった。自分の学校生活の事、特に女の子の事ばかり考えていた和也にとって京子とその男の事など興味すらなかったのだ。
 この頃の和也には目の前の現実から逃げる力が多少なりともあった。幼い頃は自分が置かれている状況から逃げ出せない事が辛かったし、だから早く少しでも大人になりたいという願望を誰よりももっていた。その逃げる力とは家に帰らなくても多少生活が出来たり、それをさせてくれる友達の力だったりした。高校生の和也は確実に京子の事を母親として見ていなかった。親として子供を育てるのが当たり前であり一度離婚したのだからもういいじゃないか、というのが和也の本音だった。

 ある日、和也は京子から衝撃的な事を言われた。あまりにも唐突だったその話しに和也はかなり困惑した。ある日京子が買い物に出かける時、和也も暇だったのでついて行く事にした。その買い物に出かける途中の車内でその話しを聞かされた。
「あなたはいつもあの人の事を見ると嫌な顔をするし、ろくに口も聞かないわよね」
 もちろん『あの人』というのは例の男の事だった。
「でもね、これだけは分かってほしいの。今の私たち親子はあの人のおかげで生活出来ているの、和也の学費にしてもそうだし生活費だってそう。今から行く買い物にしたってあの人のおかげなの。それは分かってほしいの」
 高校生だった和也に突如リアルな現実が降りかかった。その時の京子があの男に対して和也に恩を感じさせようとしたのかどうかは分からなかったが、かなりの嫌悪感に襲われた和也は、今まで以上に京子と話す事を避けるようになっていった。

 あの話をされてから和也は今まで何とも思わなかった事がやけに気になり始めていた。普段食べているご飯の事や学校の授業料の事、あらゆるお金に関連する事が気になってしまうのだ。考えてみれば分かる事だった、確かに昔に比べて京子は働きに出る事も少なくなっていたし、その割には普通の生活が出来ていた。何気にお小遣いとして渡されていたお金にしたってそうだった。全てあの男のおかげだと感じてしまう度に和也は嫌気がさしていた。そんな事からどうしても和也はあの男が好きになれなかったのだ。

【京子 4】

 京子は離婚して以来、女手一つで和也を育ててきた。その間、昼も夜もなく働き続けた。昼はパートに出て夜は飲み屋で働いた。しかしその京子の頑張りは和也との距離を遠ざけていくばかりだった。それと同時に京子は人恋しさとも戦っていた。そんな時吉田明彦と出会ったのである。吉田明彦はどこにでもいそうなサラリーマンだった、歳は京子より5つ上だった。吉田は京子と同じく離婚経験があった。二人が恋に落ちるまで時間はかからなかった。しかし京子と吉田が乗り越えなければならない問題があった、和也との事だ。果たして和也が吉田との事をどう思うかだ。その時の京子は吉田への気持ちを抑える事が出来なかった。何の説明もなく家に吉田を入れ始めた京子への和也の対応は今まで以上に冷たいものだった。

【和也 4】

 和也は高校を卒業後、大学へと進学した。大学へ進学する事を勧めてきたのは京子ではなく吉田明彦という男だった。吉田というのは和也達親子を養ってくれているあの男の事だ。和也が進路に悩んでいた時、京子はこういった。
「もし大学に行きたいのなら行ってもいいのよ。お金の事なら心配しなくていいから」
 京子は何故か『お金』の部分だけ小声だった。
「あの人はあなたが大学に行く事を勧めていたわよ。これからは大学くらい出た方がいいって」
 吉田と京子は頻繁に会うようになっていたが和也の前で会う事は少なかった。おそらく和也に気を使っていたのだろう。和也の方もそれなりに前進した事があった。前ほど露骨に吉田に対して嫌な顔をしなくなったし、会う事があれば挨拶くらいした。そんな風に過ごしていくうちに和也は、吉田の後押しもあり大学受験のために本気で勉強に取り組くむようになった。その甲斐もあって見事和也は、大学に入学する事が出来た。合格発表の日、和也は京子と吉田と3人で高そうな料亭に合格祝いという名目で行く事になった。この頃になると和也は、前のように吉田と会っても露骨に嫌な顔を見せる事はなかった。しかしそれ以上の進展はなく、こういった風に一緒に食事に行くなんて事もこの時が初めてだったのだ。一通り料理を食べ終えた後、和也は吉田に対して初めて心から感謝の気持ちを「ありがとう」という短い言葉で伝えた。それに対して吉田は「そんなお礼なんていいから、頑張ったのは和也君だし私は陰ながら応援させてもらっただけだから。それよりもこうやって一緒に食事が出来た事が私にとっては喜ばしい事だからね」と吉田は笑顔で答えた。その時京子は、吉田の隣で泣いていた。そんな京子の姿を見た和也は、自分の心の中に引っかかっていたわだかまりが解けていくのを感じ始めていた。

【京子 5】

 京子の日記より

10月13日
 この日は私にとって特別な1日となった。何より和也が念願の大学受験に合格したのだ。その後あの人と3人で食事に行った時、和也があの人にお礼を言ってくれた。あの言葉が本心じゃなくても私は本当に嬉しかった。私とあの人の関係を心から喜んでもらえる日は遠くないかも・・・・そう思ってしまうのは私のわがままなのかもしれない。

12月15日
 携帯電話のメール機能を初めて使ってみた。こういった事が苦手な私にとってはかなりの進歩だと言っていいと思う。そのうち和也ともメールが出来るようになるといいなと思う今日この頃。

6月1日
 和也にはメールで伝える事にした。今は大学の近くに住んでいるから会えないという事もあるし、電話よりもメールで伝える方法を私は選択した。

【エピローグ】

『久しぶりだね、元気にしてたかい?!お母さんは元気だよ!こうゆう大事な話しは本当なら会って話すのが一番なんだけど、メールという形で伝える事を許してね』

 京子から送られてきたメールの内容を理解するのにそれほど時間は必要なかった。これで良かったんだ、いつかこうゆう日が来る事を和也は覚悟していたし、それについてとやかく言う気は全くなかったからだ。

『お母さん今度再婚する事が決まったの!!!あなたには色々迷惑かけてきたよね。勝手ばかりして生きてきたお母さんを許してね。これからの人生はこの人と精一杯幸せになります!!!あなたも早くいい人を見つけなさいよ、くれぐれもお母さんのような人はダメだからね。』

 色んな思いが頭の中を駆け巡っていく、幼少の頃から現在に至るまでの様々な思い出を一瞬の事のように和也は感じた。

『人生はまだまだ長いと思うから親子としての関係をこれからもっと
大事にしていきたいね。 母より、親愛なる和也へ』

 メールを読み終えた後、来週あたり実家に帰ってみるか、と和也は思いながら京子の携帯電話に短い文章で返信メールを送った。

『近々そっちに帰ると思う。最高に幸せになれよ!吉田さんにもよろしく! 親愛なる母へ、和也より』

 すぐに京子から返信メールが送られてきたが、その文面が堅苦しい敬語だったので思わず和也は笑ってしまった。

【an author tsukasa nakae】

 この作品を掲載する場所を与えてくれたベンジンに感謝!そして最後まで読んでくれた方にも心から感謝!
 今思うと何とも恥ずかしい文章ですが、私にとって初めての中篇小説だったので思い出深い作品です。
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